医療提供体制に影響をもたらす3つの医療政策
厚生労働省は2019年4月社会保障審議会医療部会において2040年を展望した医療提供体制の改革として
「地域医療構想」
「医師偏在対策」
「医師医療従事者の働き方改革」
を三位一体で推進していくという方針で診療所経営に影響を与えるため考慮が必要。
「地域医療構想」
地域の関係者の合議により医療体制の現状と課題、今後の方向性についてで構想を取りまとめる仕組み
外来需要については多くの二次医療圏において既にピークを迎えている一方で、東京、名古屋、福岡などの小児や生産年齢人口が増加している地域では2045年にピークを迎えるとされている。
地域によって外来需要のピークが異なる。
大都市部:需要はしばらく、増加、若手医師の開業も比較的多い
地方都市:需要はピークを迎え、開業医が高齢化している
過疎地域:需要は減少、開業医が高齢化し、事業承継も難しい
「医師偏在対策」
2019年に厚生労働省が医師偏在の現状を正確にはかる指標として「医師偏在指数」を設けた。以下5項目を偏在にかかわる5要素として加味して策定。
- 医療ニーズおよび将来の人口構成の変化
- 患者の流出入
- 僻地などの地理的条件
- 医師の性別・年齢分布について
- 医師偏在の単位(区域、診療科、入院または外来)
地域枠がかなり増えている
2020年の医学部定員9330人のうち地域枠に当てはまる定員は1679人となっており定員の18%に拡大している
最近は地元出身者枠として地域医療に従事する可能性の高い、地元の高校の卒業生であることを出願の条件にする制度も出てきている。
診療科の偏在については新専門医制度の中で特定の診療領域については比較的供給が充実している都道府県について募集定員を設ける「シーリング」が導入されている。
日本では働く地域や専門的な診療科を自分で選択できることや教育環境が都市部で充実していることなどを理由に都市部で働くことを希望する人が多い傾向が見られる
今後は大都市の中心部で医師が過剰となり、周辺部に移動する医師が増えることが予想される。
実際に人口当たり医師数が少ないエリアとされていた、千葉や埼玉などで医師の増加率がここ10年で高くなっており医師偏在が徐々に緩和する傾向が見られている。
クリニック開業にあたっては開業地域の医師偏在指標を確認することが必要。
「医師医療従事者の働き方改革」
日本で用いられている過労死ラインとして
「発症前1か月間に100時間」あるいは
「発症前2-6か月平均で80時間」
を超える時間外労働の場合、業務と発症との関連性が認定できるとされている。
産婦人科勤務医では年間の時間外労働時間が960時間以上の割合が65.5%以上と半数以上の医師が過労死ラインを超える時間外労働を余儀なくされている。
医師の時間外労働時間の上限規制が2024年4月から施行される予定となっており、今後は年間960時間、月間100時間の時間外労働をさせた場合は雇用主に罰則が科せられる可能性がある。
20年間で全医師数は24.9万人から32.7万人と約36%増加した。
診療所医師の平均年齢は60歳と高齢化が課題となっている。これは若手医師の開業減少と高齢医師の診療継続という2つの要因があり、20から40歳代の診療所開設者は過去20年で半減している。
今後成長が見込まれる地域領域
・在宅医療ニーズの増加
・自由診療領域で美容医療や健康診断、ゲノム医療
クリニック開業に失敗しないポイント
改行によって自分が何を実現したいかと診療上の特徴を明確にする。
スケジュールのおすすめとして、勤務先をいったん退職し、非常勤で診療所のアルバイトをしながら、開業の準備と診療所経営のリアルを勉強し、半年から1年をめどに開業するのがスムーズ。
住宅地はスタッフ確保に時間がかかる。
診療圏調査:内科は診療所から徒歩10分以内が全体の8割を占めるデータがある。
開業コンサルタントが診療圏調査のツールを持っているので活用するものOK
診療所建設時には建築基準法、消防法、都市計画法、ハートビル法などの確認が必要
採用:開業時は常勤はできるだけ雇用せずパートを中心とするケースが多い。
クリニック経営に失敗しないポイント
令和元年度の調査結果では
一般診療所における売り上げは7700万円、利益は2300万円
医療法人の場合あh売り上げは15900万円、利益は1000万円。
確保しておくべき運転資金は売り上げの2-3か月分
診療報酬の仕組み
厚生労働大臣が中医協の議論を踏まえて決定。基本的には偶数年の4月に改訂。
毎月、患者保険者ごとに集計し、翌月の10日までに診療報酬請求明細書にまとめて保険者に提出する。
国保連は提出されたレセプトを審査し、請求の翌月の20-25日に医療機関が指定した口座に診療報酬を振り込むため、資金繰りに注意が必要。
開業にかかわる行政手続き
保健所への届け出(開業届)
保険申請
マーケティング
ホームページ(seo,スマホ対応)
医療広告ガイドラインに注意(違反すると都道府県による行政指導の可能性あり)
リスティング広告
従来型の広告
病院検索サイトへの登録
人材の管理
就業規則:常時10人以上の労働者を雇用している会社であれば必ず作成し管轄の労働基準監督署に届出を行う必要がある。
事前に労働者代表に意見を聞いたうえで就業規則を作成し、労働者がいつでも内容を知ることができる状態にすることで「労働者に周知ができている」と判断される。
労務トラブルの多くが離職時である。労働基準法や就業規則に関する問題に備えて、社会保険労務士や弁護士と顧問契約するなど、問題が発生した際にタイムリーに対応できる体制を整える必要がある。
リスク管理
個人情報保護について「医療・介護関連事業者における個人情報の適切な取り扱いのためのガイダンス」を参考にする。
その他
オンライン診療が行われている主な対象疾患として高血圧、AGA、アレルギー性鼻炎、睡眠時無呼吸症候群。
精神科や皮膚科はオンライン診療の適応が比較的ありそう。